
日常ニーズに特化し、至近のイオンスタイルとすみ分け
カスミ(藤田元宏社長)は15年12月10日、都内2店目となるフードスクエア板橋前野町店(東京都板橋区)を開設した。同じ道路沿いの約500mの距離には、11月に居抜きで出店したイオンスタイル板橋前野町がある。イオンスタイルはイートインのサービス機能や売場面積で勝るが、カスミは日常の買物におけるショートタイムショッピングを追求することですみ分けを図る。藤田社長は、「テナントの専門店と一緒に、地元の商店街で買物をするような雰囲気の中で賑わいや楽しさをつくり出していく」と語る。

同店は東武東上線・ときわ台駅と都営三田線・志村坂上駅の中間に位置する。1㎞内に2万1000世帯・4万4000人が居住する。しまむらや家電専門店と多層階の商業施設を形成し、カスミのフロアは地下1階となっている。ただ、商業施設は坂の途中にあるため、カスミのフロアも出入口の1つは道路に面している。
至近距離にあるイオンリテールが食を中心に時間消費型のGMSを出店したのに対し、SMとして日常の買物ニーズに応えることですみ分けを図る。
藤田社長は、「イオンスタイルの方が売場は広く、すべてのカテゴリーで当社の品揃えを上回っている。その部分で対抗しようとは思わない。我々は生活必需品を短時間で買える機能にフォーカスし、使い勝手によって足元のお客さまの満足度を高める。GMSがエンジョイショッピングであるのに対し、当社はデイリーショッピングがベースだ。そのうえで賑わい、ふれあいのある売場を目指す」と語る。
直営売場は497坪で、フードスクエアとしては小型となっている。同じフロアにはサンドラッグやカフェ、洋菓子店、ベーカリー、複数の惣菜ショップが入っている。フロア全体で地域密着の商店街のような役割を追求する。
「イオンリテールがどんなMDをするかは分からなかった。結果的にこちらのオープンが後になったので修正した部分もあるが、基本方針は変えていない。商店街のような売場を目指す以上、他店にも増して青果のプライシングは重要だ。生活者は商店街で高い野菜は買わない。買いやすい価格を365日続けることが基本になる」(藤田社長)
同店の初年度売上は17億3000万円を目標とする。

フードスクエアのMDを凝縮
道路に面した出入口は、カフェやドラッグストアをはじめとするテナントゾーンとなっている。直営の導入部はエスカレーターを降りた角地で、青果から始まる。主通路に展開する生鮮・惣菜は、第1〜3主通路を使って配置するのが一般的だが、同店は建物の構造上、第2主通路までしかない。青果・惣菜のスペースを優先的に確保しているものの、やや凝縮した印象を受ける。また、生鮮・惣菜以上にグローサリーのゴンドラスペースを削った。
「ドライの品揃えは弱い部分だが、このスペースですべて頑張るわけにはいかない。お客さまにご迷惑をおかけしない範囲で、生鮮・惣菜とのバランスを取った」(同社長)
直営売場そのものが前述のように497坪と小型だが、フードスクエアとして一通りのMDをカバーしている。品揃えは全体で9809SKUを揃える。
青果の導入部はカラーコントロールを意識したボリューム感のある陳列で、鮮魚はオープンキッチン化した壁面の丸魚で鮮度感を印象づける。精肉は通常のフードスクエアのように直営とコンセで構成し、コンセの「肉処えんや」は対面コーナーの精肉に加え、半調理キットや惣菜も取り扱う。また、試食・メニュー提案の「クッキングコミュニケーション」コーナーも設置している。
即食ゾーンの惣菜部門は、中華やチキン、天ぷら、コロッケ、カツ、魚などのテーマごとにくくった「ダイニング」コーナーを主通路に展開する。ダイニングコーナーの中で圧倒的に多いのが揚げ物メニューだ。藤田社長は、揚げ物が惣菜MDのベースと強調する。
「揚げ物の売上はもっと伸ばせる。魚系の揚げ物など、まだまだ商品が足りていない。需要のある揚げ物をしっかりやることを第一に考えている」

日刊流通ジャーナル2016年1月29日号より抜粋