三井食品(藤吉泰晴社長)は物流をベースに、青果や惣菜、オリジナル商品を活用した企画・新しいカテゴリーなど、成長分野を見極めて提案する機能づくりを進めている。自社の物流拠点を拡充するとともに、地域卸と連携することで物流網を再整備する。商品面では健康訴求、イタリア商材のトータルコーディネート、地域商材などで独自性を打ち出す。商品、売場づくり、物流などそれぞれの段階で個々の取引先に最適な機能を提案することを通して、取り組みを深化していく。
――以下は藤吉社長の発言要旨である。
個人の中でハレの日と日常の節約志向が並立する消費のスタイルが定着した。人口が減少する中で、食品市場全体はシュリンクしていく。ただ環境の変化を見据えると、シニアや健康、ハレの日など成長するカテゴリーは多くある。売場とメーカーをつなぐ卸として成長カテゴリーを見極め、商品力、企画力を身につけた豊かな食のクリエーターにならなければならない。
15年6月に社長に就任して以降、卸のベースは物流と実感している。ネットの普及で、従来は売場の役割だった商品の比較や受け取りなどが多様化している。デリバリーの形は変化しているものの、生活者に届くまでの物流の重要性は変わっていない。どのような商流になっても卸として対応できなければならない。
15年10月、新神奈川センター(仮称、神奈川県相模原市)を着工した。16年冬に竣工し、首都圏西部をカバーする。今後も自社の物流拠点の拡充を継続する。あわせて、地域卸と連携することで物流網を再整備する。物流を単独でカバーする必要性はない。13年12月に子会社化した藤徳物産(岡山県倉敷市)ともセンターや人材、配送便などをシェアすることで相互に機能を補完している。
上期、物流改革プロジェクトを立ち上げた。人件費が高騰して車両の調達が難しくなり、物流業者に委託するだけでは物流費の増加を抑制できなくなっている。物流業者とともに庫内作業や配送ルートの見直し、取引先への納入時間の柔軟化など、協働して取り組むことでコストコントロールを徹底する。さらに16年秋に稼働する新しい基幹システムと連動し、業務の効率化・コスト低減を進める。
現在の基幹システムは売上高が800億円の時に構築したもので、現状の8000億円規模、さらに将来の1兆円を見据えて刷新する。事業拡大、広域取引先への対応を含めた営業力強化、安定稼働、内部統制支援、業務・物流コスト削減につなげる。強固な物流基盤をベースに、商品やMD、売場づくりを提案する。
健康やイタリア商材を強化
商品面はPBや輸入商材を含め、健康訴求やイタリア商材の提案を強化している。ヘルスコンシャスは健康と美、健康寿命の2つの視点で取り組む。健康と美は特にスーパーフードの発掘に力を入れている。今期はPBで6月に「チアシード入りドリンク」3アイテムを発売し、11月に粉末タイプの袋入り商品6アイテムを開発した。チアシードは120g、アサイーやマキベリーは20gに設計し、シリーズの希望小売価格を800円(本体)とした。配荷は順調に進んでいる。1週間での使い切りタイプで、トライアル需要を喚起し、カテゴリーを確立したい。このほか、オーガニックやアレルゲンフリー、グルテンフリー、シリアルなどを一体的に提案する。
イタリア商材は部門を横断したイタリアMDチームを形成し、NBと輸入商品をまとめてトータルコーディネートによる売り方を提案している。イタリアの地域性などを取り入れて打ち出し方を工夫し、将来的にはさらに深掘りする。また、三井物産が国内での運営に関わるイタリア食材に特化したイータリーは旗艦店を計画していると聞いており、当社として連動を視野に入れていく。
日刊流通ジャーナル2016年1月22日号より抜粋