

箱型GMSを食品中心の時間消費型店に転換
イオンリテール(岡崎双一社長)は15年12月11日、東急池上線・御嶽山駅前のGMSをイオンスタイル御嶽山駅前(東京都大田区)としてリニューアルオープンした。1986年開設の旧店は衣食住フルラインの箱型GMSで、近年は顧客の高齢化が進んでいた。改装では時間消費型の機能を強化し、これまで取り込めていなかった30〜40代の主婦層や帰宅途中客の獲得を目指す。2階はイートインを兼ねたバル機能のスペースを中心に構成する。飲食シーンの創出に加え、書籍売場とも連動することで店内の滞留時間の長期化を図る。進化したイートイン機能を核に、ターゲット層の来店動機を高める。
2階のイートイン&バルを核に顧客層の拡大めざす
旧店の課題は、30~40代主婦層の昼間利用の弱さと、夜間の帰宅客の獲得にあった。商圏に多くあるはずのニーズを取りこぼしていたことから、3フロアのうち1~2階は食の分野に、3階は生活用品に特化して品揃えと機能を深掘りした。3フロア946坪の売場の中で優先カテゴリーに必要なスペースを割くため、衣料品とキッズ関連はカットしている。
主婦層や通勤客の取り込みに向け、時間消費型の機能を強化した。中核的な役割を担うのが2階の中央に配置したイートインスペースとバル機能のカウンターだ。イートインには約40席のスペースを確保し、バルのカウンターではグラスワインやカフェ、軽食を提供する。1階フロアのベーカリーを使ったモーニングセットや、量り売り惣菜のメニューを活用するほか、生ハムやナチュラルチーズも揃える。カフェはドリップ系に加えエスプレッソやカフェラテも揃え、グラスワインは300~800円の価格帯で提供する。
河井祐介店長は、同スペースの活用について次のように語る。
「昼間はカフェ、夜はバルが基本となる。1階で購入された商品を持ち込めることの周知を徹底し、デリカの売上増につなげたい。都内のお客さまはバルへの理解も深く、同様の機能で先行するイオンスタイル板橋前野町(東京都板橋区)をみても、子供連れの主婦層が気軽に利用されている。シニアの利用者も多く、さまざまな使われ方をされている。商圏の生活者の高い感度に合わせた雰囲気をつくり、昼間は主婦層、夜間は通勤客が帰宅前にくつろげる場所を目指す。今後は食と住生活をテーマにワークショップも企画していく」

書籍と物販をリンクして展開
2階は中央に配置したイートイン&バルのスペースを囲むように主通路が通り、壁面を中心にグローサリーを展開する。輸入菓子やオーガニック食品、ヘルス&ウェルネスといったテーマでくくった棚を設けるほか、各カテゴリーで上質品の取り扱いを増やしている。グローサリーの品目数は旧店の2倍以上となる7800SKUとなっている。
また、バルに隣接するリカー売場は、専門店化によりSKUを約10倍に拡大した。ワインを中心に、洋酒や輸入ビールの取り扱いもほぼ最大規模となっている。
「リカーショップとバルは、リカー部門の専門チームが運営にあたる。バルでの飲用体験を物販につなげていくことが重要だ。ただ、イートインとバルの機能は2階フロア全体に関わることであり、書籍を試読するスペースとしても活用していただける。そのため2階のオペレーションはフロア全体で取り組む。小型店なので改装前から組織は縦割りになっておらず、柔軟に対応できる」(河井店長)
書籍の棚は2階エスカレーターの昇降口前に配置するほか、リカーショップの奥にも売場がある。さらに3階中央にも書籍の棚と試読スペースを設けた。書籍を売場演出のツールとして活用している。
「3階の書籍売場には住生活に関する本、2階は棚ごとにテーマを設定しつつ、酒類に近い棚には男性の趣味嗜好に合ったものを配置している。実際のチョイスはイオングループの未来屋書店が行い、売場の管理は直営で行う。店内の滞留時間を延ばすことが書籍を導入したねらいだ。旧店の商圏は自転車で5~7分が中心だったが、2階の機能により広域化したい」(同店長)


日刊流通ジャーナル2016年1月26日号より抜粋