


ビールシフトで収益力の向上へ
キリンビールは15年度、ビール類計が0.2%増となり、06年以来の前年クリアを達成した。ビールに限れば、1994年から21年ぶりのプラス成長となった。主力の「一番搾り」が4.2%増と伸長したことによる。16年はビール類トータルでは微減で予算を組むものの、ビールは2.3%増、なかでも「一番搾り」は4.9%増を計画する。素材・旬・地域性といった切り口でビールの魅力を多角的に打ち出し、ユーザー層の拡大を図る。
47都道府県の一番搾り
組織力・営業力の進化めざす
昨年の地域限定「一番搾り」は、当初計画の2倍を販売した。価値創造とCSV的な要素を兼ね備えた象徴的な取り組みだった。今年は47都道府県それぞれの「一番搾り」を商品化し、地域とのつながりをいっそう強力に打ち出す。
マーケティング部の田中敏弘部長は、「47の違う味、個性を商品化するため、地域ごとにワークショップを開催した。全地域で400名に参加していただいた。地元の誇りを、おいしさに変える商品づくりに取り組むことで、地域密着営業に拍車をかける」としている。
47都道府県の「一番搾り」は、5、6、8、10月に分割して発売する。トータルでは120万ケースを予定する。
布施社長は、47都道府県へのチャレンジで企業全体の組織力も向上させるという。
「地域ごとに全県民から知っていただけるように取り組む。それを目指していけば、営業のやり方は変わってくるだろう。個々人の能力を高め、会社全体が変わるチャンスと期待している」
「一番搾り」は、地域とのつながりだけでなく、素材のバリエーションや旬の提案にも力を入れる。2月23日には期間限定の「春爛漫デザインパッケージ」を発売する。合わせてポイントコレクトキャンペーンを実施し、ビールに旬の素材の香りを付加できるプレッサーキットか、桜の花びら型の泡ができるタンブラーセットをプレゼントする。
3月15日には一番搾り製法で小麦麦芽を搾った「小麦のうまみ」を発売する。昨年に続く期間限定品で、アルコール分を5%から4.5%に落とした。女性や若年層からの支持が高かったことから、その嗜好に合わせて中味設計を見直した。
4月12日には、単一品種のオーガニック麦芽を使用した「一番搾り シングルモルト」を発売する。イギリス産ウエストミンスター種のオーガニック麦芽のみを使用するもので、素材へのこだわりと、一番搾り製法の魅力を表現する新境地に挑む。もともとオーガニック麦芽での商品開発をコンセプトとしていたが、それだけでは訴求力に欠けるという判断から、単一品種のシングルモルトとすることで味わいへの興味を喚起する。

グランドキリンを刷新
クラフトのイメージ強調
マスブランドの「一番搾り」以外に、クラフトビールの取り組みを通じて多様なビールを提案する。東京・代官山と横浜市鶴見区の2カ所を拠点とする「スプリングバレーブルワリー」は、現地での提供のほか直販サイトでも販売する。また、ヤッホーブルーイング社の「よなよなエール」 を、新たに業務用チャネルで展開していく。
コンビニ限定で展開する「グランドキリン」も、クラフトビールの1つと位置づけている。昨年からクラフトマンシップの打ち出しを強めており、限定品では「梟の森」、「十六夜の月」、「ギャラクシーホップ」など、ネーミングにも新しい発想の商品が増えた。
春には本体をリニューアルし、パッケージを従来の黒基調から白基調に一新する。中味にも手を加え、稀少なネルソンソーヴィンホップを一部使用して華やかな香りとその余韻を強化する。内容量330mlで、アルコール分は6%と設定する。
同時に、春の限定品「うららかをる」を発売する。エールタイプのビールで、ブラボーホップを使用した柑橘系の香りを特徴とする。アルコール分は5.5%となっている。
ビール以外のカテゴリーでは、新ジャンル「のどごし生」が10.7%増と伸長した。機能系の「のどごしオールライト」や、季節品の展開など積極的なエクステンションが奏功した。
発泡酒は、「淡麗」ブランドがトータルで微減となるなか、機能系の存在感が高まっている。2月中旬製造分から「淡麗グリーンラベル」をリニューアルし、アロマホップの配合を見直すことで香りと飲み応えのバランスを調整する。
週刊流通ジャーナル2016年2月1日号より