「新鮮」果汁感で新定番めざす



アサヒビールは4月5日、RTDの戦略商品「アサヒもぎたて」を発売する。収穫後24時間以内に搾汁した果実を使うほか、独自技術による製法で香味の劣化を極力抑える。新鮮(フレッシュ)さを最大限に追求した設計で、RTDの定番ブランドを目指す。
フレーバーはレモン、グレープフルーツ、ブドウの3種類を揃え、アルコール分は9%に設定する。伸長が続く高アルコールのストロング系に、RTDのメインストリームである果実系の商品を投入する。市場の最大ボリュームゾーンに、新鮮という価値軸で真っ向から挑む。発売初年は12カ月で500万ケースの販売を予定する。
平野伸一副社長は、「当社の15年RTD事業は2%増と前年を上回っているものの、市場の伸長率に追いついていない。総合酒類提案のリーディングカンパニーを目指すうえで、最大の課題というべきカテゴリーだ。3年の歳月をかけて不退転の決意で開発し、RTD市場のど真ん中へ提案する。これまで主軸が欠けていた当社のRTDブランドのポートフォリオで、不動のクリーンアップを担えるよう育成していく」と語る。
開発段階の調査で、現状のRTDへの不満点は人工的な甘さや香りにあるという分析結果を得た。自然な果実感によるフレッシュな香りとすっきりした味わいで、新たな価値軸の創造を目指す。
マーケティング本部長の田中晃取締役は、「新鮮さを打ち出すことは、ユーザーから新しいと感じてもらえるものであり、ブランドスイッチの要因として最も評価の高い価値だった。一般的には収穫から搾汁まで48〜72時間かかるとされているが、3日も経つとレモンの香気成分は1日目の10分の1に減少してしまい、劣化した臭いは1・4倍になってしまう。24時間以内に搾汁したフレッシュな果汁を使い、特許出願中のアサヒフレッシュキープ製法によって製品後の劣化を防ぐ」としている。
果汁はレモンとグレープフルーツがシチリア産、ブドウはアルゼンチン産の白ブドウとアメリカ産の赤ブドウを使用する。いずれもプリン体、糖類、着色料ゼロの設計になっている。今後も新たな通年フレーバーを追加するほか、限定品の投入も計画している。

食中シーンの獲得へ
フレッシュな香りとすっきりとした後味を追求した背景には、それが食中酒として必須の要件と判断したからでもある。
「高果汁チューハイも注目されているが、RTD市場の中で5%にも満たない。最大の理由は食中酒に向かないからで、常飲するカテゴリーではない。RTD市場が伸びているのは、ビール代替として食中に飲まれるシーンが増えているからだ。ビールからの流入の受け皿になる商品を目指した」(田中取締役)
発売前後で50万人のサンプリングを実施する。ウェブでのモニター調査のほか、店頭のイベントを通じてブランドの浸透を図る。
週刊流通ジャーナル2016年2月22日号より