
「ヘルシーリビング&ソーシャルマーケット」の実践へ
いなげや(成瀬直人社長)は18日、東京都西東京市に保谷町店を開設した。14年3月までマンション1階で営業していた旧店を閉鎖後、用地を取得し上新電機を誘致して2フロア型店舗として再オープンした。今回、500坪の標準タイプだが、「来期からの中期経営計画のテーマであるヘルシーリビング&ソーシャルマーケットの実践に取り組んだ」(福島正弘店長)。昨年下期に開設した次世代型店舗で支持があったものを定番売場に再配置すると同時に、至近の既存店にないベーカリーなどを取り入れ、エリア内でニーズを完結する。
成瀬社長は4月からスタートする新しい中期経営計画の概要について、次のように語っている。
「惣菜プラス生鮮の店づくりをはじめ、従来と大きく変わることはない。いままでの取り組みを踏襲し、レベルアップを図る。数字の面では、売上高3000億円が視野に入った。昨年下期にブルーミングブルーミーららぽーと立川立飛店(立川市、679坪)、新ゆりヨネッティー王禅寺前店(川崎市麻生区、620坪)で新しいことに取り組み、うまくいかなかった部分は既存店の改装で修正していきたい。これからは商品経営への転換がキーワードになる。いままでマネジメント主体でやってきて、売りたいものではなく、チェーンオペレーションでメーカーがつくったものを売ってきた。遅ればせながら、マーケティング志向でお客さまをみて、開発・仕入れをやっていくことがいなげやの柱となる」

上質なスタンダードをサブテーマに
全カテゴリーでトレンドを反映
今回の保谷町店は、改装に近い新店とみなす。西武新宿線・西武柳沢駅から徒歩8分の新青梅街道沿いに立地する。至近の600mの距離には、13年11月にオープンした自社店舗の西東京富士町店(283坪)がある。旧店は297坪だった。
再オープンに際し、ヘルシーリビング&ソーシャルの実現と同時に、上質なスタンダードをサブテーマに掲げる。「昨年、ららぽーと、ヨネッティーの2店で、新しい店づくりに挑戦したが今回、右に振った分をもとに戻した。西東京市では、当社の従来の商品構成が合っている。ただ、2店でお客さまの支持があったもの、実績があったものは定番売場に再配置した」(福島店長)
旧店の日商は閉鎖時点で、330万円だった。至近の西東京富士町店は直近で、530万円を売り上げ、運営が追い付かない状況にある。保谷町店で、最近の生鮮プラス惣菜をベースとした店づくりや新たにインストアベーカリーなどを取り入れることで、平準化を図る。「2店体制となっても西東京富士町店は400万円は見込める。保谷町店は将来、閉鎖時の倍の660万円を目指したい」(福島店長)
保谷町店は508坪で惣菜、生鮮の強化に加え、スーパーフードの導入をはじめ、各カテゴリーで健康、安心・安全、簡便、上質などを切り口にアソートした。
導入部の青果は入口で地場野菜、産直野菜、ナチュラル&オーガニックを1カ所にくくった。有機プチベール、プリルレタスなど幅広い料理のニーズに対応し、高額のオレンジジュース、トマトジュースも取り扱う。簡便ニーズへの対応で、袋入り野菜は蒸し野菜、7種の野菜、スティック野菜などを揃え、カレー、サルサ、ゆずこしょうなど、ディップソースを面で関連陳列した。サラダ関連の充実で生ハム、チルドドレッシングを冷ケースに陳列し、豆苗などのスパウト、ハーブ、関連のペーストを揃え、「新芽のチカラ」としてコーナー化した。

生鮮でこだわり素材を充実
また最近の新店と同様、通路にカテゴリーを越えた複数の催事コーナーを展開している。イタリアン、スーパーフードなどは定番だが、地域ブランド・商材に着目し、無添加の豆腐惣菜「一丁庵」、バイヤーが発掘した鹿児島のさつま揚げ、つけ揚げと芋焼酎を組み合わせ、コーナー化した。
鮮魚は本マグロをはじめ、生マグロの品揃えにこだわると同時に、ヒラメ、本カワハギ、カンパチなど、季節の素材を商品化した。最近の新店と同様、オープンキッチンによって、鮮度を強調し、天然かき、アワビ、サザエ、ツブガイ、キンキ、ノドグロなど、高級商材も充実させた。精肉はブームの熟成牛のほか、仙台和牛、トンテキなど、厚切り肉の食スタイルを提案している。惣菜と交差する第2主通路の一角は、ワインの展開が定着している。ワインとの関連で、ミートデリカ、ナチュラルチーズを一角に集積した。ワインはイタリア、スペインなど国別にアソートし、人気が高いフランスはブルゴーニュ、ボルドーの産地でくくった。1000円以下の値ごろ感のあるものに加え、2000円台後半、4000円以上のものまで幅を広げた。
ミートデリカは店内加工の友三角ローストビーフ(黒毛和牛)を核に、ローストポーク、サーモンカルパッチョ、タパスなど、周辺商品を固めた。隣接のチーズ、サラダと一体で、ワインとの親和性のある売場づくりに取り組んだ。


日刊流通ジャーナル2016年2月24日号より抜粋