エブリイホーミイホールディングス(岡﨑雅廣社長)はSMや外食などグループの円滑な連携が進み、食材の共同調達などで想定以上のシナジーを発揮している。特に、全国各地の産地とのネットワーク形成による生鮮素材の調達が順調で、差別化の源泉となりつつある。生産者のもとを訪ね、ともに課題解決していくことの評価や産地から全量買い取ることで強固な信頼関係をつくり、グループのSM、外食で素材を使用するほか、情報システムによる新しい取引形態を構築する。今後5年で、食のエンターテインメント化を追求し、SMとレストランの一体化を目指す。
2014年9月、SMのエブリイ、外食のホーミイダイニング、夕食材料宅配のヨシケイ福山などグループ9社の持ち株会社、エブリイホーミイホールディングスが発足した。各社が有機的に連携し、シナジーを発揮することをねらった。エブリイをはじめ中核企業のインフラが整ったことに加え、グループ全体で新しい成長の兆しがみえてきたことで、今年1月1日付けで、主力企業のトップ人事を刷新した。
エブリイは岡﨑社長の長男の岡﨑浩樹常務が社長に昇格し、二男の岡﨑裕輔常務が代表権のある副社長に就いた。また三男の岡﨑真悟氏が外食の主力企業のホーミイダイニングのトップに就任した。岡﨑雅廣社長はホールディングスのトップに専念し、グループ全体の方向性を指揮する。
岡﨑社長はグループ売上高1000億円はいまの組織で達成可能だが、次の1500~2000億円を見据え、新体制に移行したことを強調する。
「エブリイの新社長は就任に際し、私以上に現場尊重の姿勢を示し、役員は現場に出て意見を収集し、それを取締役会で討議することを提言した。また副社長がリーダーとなって進めている商品開発のレベルが段々、上がっている。代表権をもたせた方が、早く新しい流通ができると確信した。従来、市場流通の枠組みで生鮮品を調達してきたが、それに加え、農家、漁業の方、畜産農家とどのように関わっていくかということが求められている。全国の生産者の方々とのWIN-WINの関係による新しい流通の形ができつつある」
また外食も収益が広島県内で2位と成長している。市場流通の規格外のものを外食、居酒屋、夕食材料宅配などで使用することで、全量買いすることが可能になり、産地と力強い信頼関係をつくり上げている。規格外の野菜を使ったイタリアンレストラン、ラソラは獲れたての野菜の味が支持され、多店舗化が視野に入っている。
「4つの窓」を基本思想に
企業価値を地域内で最大化
「事業会社を深掘りするのは、若い力の方が早い。売上高1000億円が視野に入って、利益ばかりを追い求めると、地域で存続できない。グループ全体として、企業価値を地域の中で最大化する方向にシフトしている。またビジネスモデルの進化のスピードは早く、事業会社は若い人に代表権をもたせ、スピーディーに変えていかなければならない。トップが若い方が新しい人材も発掘できる。
私自身はグループ全体をクロスさせ、シナジーを追求する。例えば、M&Aで取得した岡山の高級料亭、はむらの料理長にグループのおせちを監修してもらったところ、数段上のものができた。次に、はむらの名前でPBをつくることを指示している」(岡﨑社長)
グループには、「4つの窓」の基本思想がある。売上・利益の向上、お客様に喜び・感動を与える、頑張る社員のための環境づくり、社会貢献を骨子とするもので、社長の指示よりも上位概念に位置づけられる。
またグループのYPYエデュケーションはスタッフ派遣の会社だったが、ステイタスのある教育企業に変わりつつある。各人の性格に合わせて、個人の能力を最大化する「類人猿セミナー」は社外でも好評で、大手の製造業、旅行代理店からの定期研修の依頼があるという。
今後はセミナー内容を外国版にしたものも、普及する予定である。全国の生産者とのネットワークは全量買い取りによる信頼関係の下に成り立っている。地方市場にはいい商材が集まらず、ローカルチェーンとして成長を持続するうえで、調達にまで踏み込まなければならなかったという背景もある。農業、漁業、畜産の生産者と消費者に喜んでもらい、WIN-WINの関係をつくりあげる。グループのSM、外食で取り扱うほか、果物ならエブリイのスイーツコーナーで素材としての利用やPB化、産地の製造業者に材料供給するなど、一部、6次産業化の取り組みも行っている。
日刊流通ジャーナル2016年4月13日号より抜粋