
体験型SCを志向、核店舗のイトーヨーカドーは個店経営で地域色
イトーヨーカ堂(亀井淳社長)は4月25日、千葉県柏市にセブンパーク アリオ柏をグランドオープンした。大型商業施設として、地域と連携したイベントなどで地域密着の取り組みを進める。直営のGMSは品揃えや売り方などで個店運営を追求し、衣食住すべてのカテゴリーで地域商材を拡充した。主通路に精肉で1カ所、惣菜で3カ所のオープンキッチンを配置するなど、ライブ感の演出を強化した。また、「オムニ7」専用のカウンターを導入した。

セブンパーク アリオ柏はJR常磐線・柏駅から南東へ4㎞の幹線道路沿いに位置する。18カ所目のSCとなった。敷地面積3万9325坪、売場面積は3フロア6万5000坪で、駐車台数は4000台。グループ専門店を含め200のテナントを集積した。敷地面積、売場面積、テナント数、駐車台数とも、最大規模となった。商圏は10㎞内の21万5000世帯・53万人を想定している。初年度の売上高は300億円、客数は1300万人を目標とする。
モール・エスシー開発の近藤悦啓社長は、SC開発の方向性について次のように語っている。
「SCはこれまで、物販で満足度を高めることに力を入れてきた。時代が変化する中で、地域や規模でお客さまのニーズに違いが出てきている。14年11月にオープンしたグランツリー武蔵小杉(川崎市中原区)は、駅前立地の都市型で高感度なSCづくりに取り組んだ。セブンパーク アリオ柏は駅から離れていることに加え、商圏に柏市、我孫子市、松戸市、鎌ヶ谷市、千葉ニュータウンを含む。レジャーなど遊びを中心とした時間消費型のSCを志向する。北側にバーベキューコーナーやドッグランなどを併設した4000坪の公園、外周に800mのウォーキングロードを設置した。地域と連携しながらさまざまなイベントを開催し、商業施設として変化を演出していく」
惣菜で3つのオープンキッチン

イトーヨーカ堂の売場面積は全体の約2割を占める。個店運営を取り入れ、衣食住とも地域商材を充実するほか、惣菜で3つのオープンキッチンを導入するなど新たな取り組みにチャレンジした。
野口信行執行役員販売本部長は、「アリオ上尾店を皮切りに地方を含め、店舗主導で品揃え、売り方を考え、接客サービスできる体制に変えている。地域密着型の売場づくりの取り組みの成果が徐々に明確になり、15年10月ころから全体として客数が上向きになってきた。さらに今期、仕入機能をエリアへ移管した。その中でアリオ柏店をオープンする。独立運営店舗と位置づけ、随所に県産品を取り入れたことで、特に食品が大きく変わった。対面式のオープンキッチンはこれまで非効率とみなしていたが、店の要望で主通路に導入した。地域商品を取り扱い、対話しながら接客して固定客づくりに取り組む。食品の中で生鮮・惣菜の売上構成比は53%を計画している」と語った。
導入部にイトーヨーカ堂として初めて、青果の対面コーナーを設置した。カットフルーツのほか、インストアでつくるスムージー、タルト、フルーツゼリーなどを取り扱い、オーダーにも対応する。精肉は主通路にイトーヨーカ堂として最大規模(190尺)の対面コーナーを設けた。美笑牛や房総ポークなど千葉県産のほか、各畜種の銘柄肉、トンカツやコロッケなどの半調理品、SCと連動してバーベキュー商材をまとめた。また壁面でサラミや生ハム、レバーパテなどオードブルメニューを中心にこだわりの加工肉をコーナー展開した。鮮魚は壁面でオープンキッチン化し、千葉県内の漁港から直送する丸魚で鮮度感をアピールし、調理加工を受け付ける。銚子を主力に、木更津など県内の漁港にバイヤーを配置している。
惣菜は主通路に洋風、軽食、米飯のテイスト別に3つのオープンキッチンを配置した。洋風は過熱水蒸気オーブンを導入しグリルメニューや揚げ物を取り扱い、軽食は店内加工のサンドイッチ、ピザ、パスタ、ドリア、米飯は弁当、寿司、アウトパックのおにぎりやチルド弁当などをまとめた。壁面も焼鳥や魚惣菜、サラダ、オードブルなどメニューごとに専門店風に展開する。ここにチーズの量り売りの「チーズショップ」と酒類を隣接した。酒類の取扱品目のうち7割をワインで構成し、ドライフルーツや缶詰などを関連陳列する。チーズショップは大宮店(さいたま市大宮区)で好調なことから、従業員の要望で導入した。チーズの食べ方やワインとの相性などを提案する。銘店は、隣接する西武・そごうのショップに集約した。テナントミックスで、SCトータルの魅力アップを考慮した。


日刊流通ジャーナル2016年5月10日号より抜粋