
東急ストア(須田清社長)は5月27日、プレッセ田園調布店(東京都大田区)をリニューアルオープンした。各部門が専門性の深掘りをテーマに、MDを全面的に見直した。新しいカテゴリーとして「なだ万」の弁当や専門店のイタリアン惣菜、水産では羽田空港内の鮮魚センターから直送される「超速鮮魚」などを導入している。同店をプレッセの新しいモデル店と位置づけ、再構築したMDの効果は検証のうえ、プレッセの既存3店舗に広げていく。

プレッセの新店は2007年3月の東京ミッドタウン店(東京都港区)が最後で、以降は全社的な店舗再編の過程で閉鎖や標準店への転換があり、現在は4店舗となっている。この間、プレッセで成果を上げたMDは東急ストアへの導入が進み、アップグレード業態としての特徴が薄らいでいた。
店舗戦略室店舗企画課の遠藤草太課長は、「プレッセの成長が止まり、東急ストアとの差がなくなっていた。一方で、標準店で作業改善のプロジェクトを継続するなか、プレッセはその取り組みから遅れて生産性の課題も顕在化していた。今回、プレッセのMDを再構築する過程では、オペレーションの見直しも同時に進めた」としている。
田園調布店は2000年4月、東急東横線・田園調布駅の駅前商業施設に出店した。改装では天井や主通路の床材を張り替えたほか、冷ケースや什器の一部を変更している。売場のレイアウトに大きな変更はないが、酒類売場の演出を変えたほか、惣菜売場のゾーニングを見直している。

生鮮品 新規開拓で幅を広げる
当日水揚げの丸魚を夕方に展開
業態や商圏の特性上、生鮮3部門の価格帯は通常のSMに比べれば総じて高いが、日常の利用シーンを踏まえたMDがベースとなっている。そのうえで、カテゴリーごとに上質品を取り入れている。青果では、店内加工のカットフルーツを充実させつつ、自由が丘の専門店「ザ・トウキョウ フルーツ」の商品を導入した。水産部門は干物の有名ブランドで品揃えを拡充し、マグロは国産・生に特化した品揃えを常時、コーナー化する。
畜産の牛肉は、もともとA5等級を中心としていたが、改装後はさらに神戸牛を加え、赤身肉の提案を強化している。また、国産仔牛肉やマンガリッツァ豚、イベリコ豚といった希少品種や、ラム肉でも部位別の品揃えを充実させている。これらは必ずしもアップグレード商品という位置づけではなく、品揃えの幅を広げる目的で導入している。
水産部門のオープンキッチンコーナーは、丸魚の提案で新たな試みを導入した。改装前は丸魚もパック化した品揃えをベースとしていたが、氷の上に活〆したヒラメやオマールエビを並べるなど、鮮度感の演出を高めている。これらの丸魚は、午後になると切り身に下ろして売り切っていく。夕方に向けてはその日に水揚げされた産直品を入荷し、丸魚コーナーは一新する。羽田空港内の鮮魚センターで仕分けした「超速鮮魚」を導入するもので、丸魚のほか切り身も含まれる。
超速鮮魚は、CSN地方創生ネットワークが運営するオンラインマーケット「羽田市場」が提供する商品で、魚種はすべて漁師との直接取引で調達している。外食店のほか、百貨店内の専門店などが利用している。現在は田園調布店だけの取り組みだが、他のプレッセへの導入も検討している。


日刊流通ジャーナル2016年6月7日号より抜粋