カスミ(藤田元宏社長)は15年度までの3カ年で30店を新設した。年間7%の伸長を目指し、2ケタ出店を続ける。16年度も11店を新設した。イニシャルコストが高騰し、厳しい環境にあるが、藤田社長は「社員の成長のためにも、出店は必要だ」と語る。17年度は、商品、売場が顧客のニーズに近づくことを最大のテーマに掲げる。
――以下は藤田社長の発言要旨である。
当社が出店している茨城、栃木、群馬は、お客さまの買い方から、関東のほかのエリアと比べて、景況感が違うことを実感する。高齢化、少子化ということがいわれて久しいが、実態として、そうなってきている。ローカルエリアの中で顕著なのは、家族数が少ない世帯が増えたことではないかと思う。高齢の夫婦、単身世帯がじわじわ増えているように思えて仕方がない。そういった意味で買物の頻度、買上金額が減ってくる。こうしたエリアの店はすでに小商圏になっている。個店ごとに、店づくりを変えざるを得ない。
今期も茨城県に7店出店したが、それぞれエリアの特徴を出すことに取り組んだ。商圏が狭まる中、地域で集える場、休める場のような機能を充実させなければ、新しい店に来ていただけない。
われわれは地域社会に必要とされる店になろうというソーシャルシフトの取り組みを進めている。地域商品を発掘し品揃えするほか、地域催事に参加することも、そのひとつかもしれない。地域で働いている人たちのネットワークも借りながら、ニーズに合わせてサービスを考えていく活動がソーシャルシフトで、理念として全店が共有している。少しずつ形ができ、一部、客数を伸ばし続けている店も出てきた。
また小商圏型でファミリーマートとの一体型店舗を3店展開している。16年8月にオープンしたファミリーマートプラスカスミ白岡駅西口店(埼玉県白岡市)は初年度で見通しがついた。先行2店との違いは120坪の規模を確保したことである。またカスミの売場の比率を6割程度にし、生鮮を広げた。駅前立地で、買物に困られている方が多いという商圏特性も影響している。ほかの2店も計画の数値を達成しつつある。まだまだ検証の段階だが、白岡駅西口店のような立地と規模であれば、何とかなりそうだという感触をもっている。
前期までの3カ年計画で30店を新設した。東京都内の錦糸町店(墨田区)、板橋前野町店(板橋区)はようやく、計画した客数・売上を達成できるようになってきた。新しいエリアでカスミのブランドが浸透するには1年かかる。2年目以降、既存店として成長していくのであれば、投資した効果があると思っている。
日刊流通ジャーナル2017年1月13日号より抜粋