カルビーのシリアルブランド「フルグラ」は、15年度の売上高(出荷ベース)が前年比1.5倍の220億円弱になる見通しだ。11年に37億円だった売上が、4年で約6倍に拡大している。急増する売上に合わせ、生産体制の増強も続いている。14、15年と製造ラインを増設してきたが、現状の生産能力は年間200億円を想定したもので、既にキャパを超えている。4月には新たに2ラインが稼働し、全6ラインで生産能力を350億円まで引き上げる。ただ、これもブランドの成長戦略では通過点となる見通しで、遅くとも19年度には売上高500億円を目指す。

シリアル市場は長く250億円前後の推移が続き、カルビーのグラノーラ製品も1989年の全国販売から20年が経過した時点では30億円前後にとどまっていた。11年にグラノーラがブームとなり、「フルグラ」の売上は37億円になった。その後12年は63億円、13年は95億円、14年は143億円と飛躍的に伸長し、前述のように15年度は200億円の突破が確実だ。
松本晃会長は、「私が外部からやって来てCEOに就任した当時、誰もフルグラを本気で伸ばそうとしていなかった。東日本大震災の前日、私はフルグラを製造する清原工場(宇都宮市)にいて、みんなに気合を入れたことを覚えている。日本人にはシリアルがあまり受け入れられてこなかったが、それは美味しくないからだ。フルグラは違う。これをシリアルと呼ぶな、必ず売れるものだと訴えた」と語る。
「フルグラ」の製造は、宇都宮市の清原工場に集中している。販売量の増加に伴い、14年は12億円をかけて第3ラインを増設した。15年5月には37億円をかけて第4ラインを設け、生産能力を200億円まで引き上げた。それでも前述のように供給能力を上回る売上規模になったことから、4月には70億円の設備投資で第5、第6ラインを稼働させる。年間の生産能力を350億円に高め、16年度は売上高300億円を目指す。
松本会長は、今後2〜3年で500億円に高めるという。
「遅くとも19年度には売上高500億円を達成したい。増設したラインを半年くらい稼働させたタイミングで、次を考える。朝食シーンにおける成長の余地は大いにある。19年度にはシリアル市場は1000億円規模になるだろう。その時点でグラノーラは800億円ほどと見ており、当社は6割以上のシェアを目指す」(松本会長)
マーケティング本部フルグラ事業部の藤原かおり事業部長は、「フルグラの成長はブームをきっかけとした11年以来の第1ステージから、国民食として定着するための第2ステージに入る」としている。

手軽さ・健康で朝食革命
豆腐とセット商品 和日配に進出
これまで「フルグラ」が急速に拡大した理由と、今後も大幅な伸長が見込める要因として、松本会長は朝食シーンの主要カテゴリーである米食、パン食からのシフトを挙げる。
「米もパンも美味しいが、シリアルに比べれば準備に時間がかかる。また、和食はもちろん、パンも塩分がわりと多く含まれている。シリアルは食物繊維が豊富なだけでなく、塩分量がとても少なくて済む。手軽さと健康性で日本の朝食に革命を起こせる。ターゲット層の第1は女性で、次に年配者と位置づけている。血圧などで健康意識が高くなるシニア層を取り込んでいく」(同会長)
「フルグラ」は急増する需要に対してタイトな供給が続いたため、これまでフレーバー展開を十分にできたわけではなかった。現状はスタンダードの800gサイズが売上の6割を占めるが、今後はバリエーション展開を本格化していく。
また、ヨーグルトや牛乳と合わせて食べるだけでなく、さまざまな楽しみ方で食シーンの拡大を図る。主力の800gは家庭のファミリー需要を中心とするが、昨年は個食シーンを広げる手段として、ヨーグルトとセットにした商品をセブンーイレブンの九州エリア限定で発売した。山口県の乳製品メーカーとコラボしたもので、エリアを拡大するには新たなアライアンスが必要となる。
今年3月には群馬県の大豆加工食品メーカー相模屋とのコラボで、豆腐と「フルグラ」をセットにした「豆腐で、グラノーラ」(税込298円)を発売した。首都圏SMで展開が始まっており、これまでカルビーには接点のなかった和日配の売場に進出している。

週刊流通ジャーナル2016年3月25日号より